アスディバインディオス

世界は、精霊神によって創造される。
　悠久の時を生きる精霊神たちは、比類なき超常の力によって、己の世界を育て、祝福する。
　さながら己の庭のように。そこに芽吹く、草木のように。

最も生命に溢れた世界があった。
その名はアスディバイン。
「浄化」の力を有する精霊神、イザヨイによって治められる、穏やかな世界である。

「人間」とよばれる知的生命はアスディバインにもいた。
彼らはしかし、しばしば憎しみ合い、傷つけ合い、世界に「ケガレ」を生じさせる。
「ケガレ」は動植物を凶獣へと変異させる、神さえも手を焼く忌まわしいチカラ。
それを配下たる精霊たちに集めさせ、浄化することで、イザヨイは世界の平穏を保つ。

「ケガレ」によって愛すべき精霊たちを困らせる人間に対し、
いつしかイザヨイは、親しみも興味も持たなくなっていた。
弱々しく、寿命も短い、少し厄介な、取るに足らぬ存在、と。

まさか、そのうちのたった一人が、
　彼の世界に滅びを呼びこむことになろうとは、
　神たるイザヨイや、彼を支える精霊たちですら、知るよしもなかった。

これは、人が神を──
そして、神が人を知る物語。

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