かつて、世界は魔王によって支配されていた。
それは、まさに地獄のような日々。
人間は生活圏を追われ、
いつ無惨に殺されるかわからない
恐怖に怯えながら、
ひっそりと見つからないように隠れ暮らしていた。
しかし、そんな世界も後に英雄と呼ばれる者達が
相撃ちとなりながらも魔王を滅ぼしたことで
劇的に変化する。
死を心配しない日々、
隠れ暮らさなくても良い生活。
それは、
多くの人達が夢にまで見た平和な世界。
そう、彼らの活躍により、
地獄は幸福に満ち溢れた天国へと
一変したのだった。
そして、時は流れ。
当然ながら、人々の中には
その幸福な世界しか知らない者が誕生していた。
とある少年ヴェドリーも、その一人である。
人助けに尽力する自慢の両親と、
いつも自分を心配してくれる心優しい姉に囲まれ、
毎日楽しい日々を過ごす彼は、
それが永遠に続くものだと思っていた。
しかし、そんな幸せも儚く散ってしまう。
なぜなら、自慢の両親が死んでしまったのだ。
しかも、自分が無茶な行動をしてしまったせいで……
少年は成長し、青年となる。
だが、身体が大きくなっても、
幼い時に負った心の傷は一向に癒えないまま。
事あるごとに彼は過去を思い出し、
後悔し、思い悩んでいた。
そんなある日、
彼はアチエーツと言う男と出会い、
信じられない話を聞く。
なんでも、時を操るオートマタ
『リトアール』と言うものが存在し、
それと契約を交わして『マスチェル』となる。
そして、そのリトアールの核である
『セルツェ』を奪い合う戦いに参加し、
その戦いに勝ち残れば、
どんな願いでも叶うと言うのだ。
それは、あまりにも荒唐無稽な話。
普通ならば、誰も信じない内容。
だが、彼――ヴェドリーは違った。
たとえ、嘘でも、デタラメでも、
耳を疑うような内容でも、
そこに両親を
生き返らせる方法があるのなら、と。
ヴェドリーは、その戦いに参加する決意をする――