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藤良村(ふじよしむら)は××県中北部の山間部に位置する村落・自治体である。
人口は約1,000人程度であり昭和期以降減少傾向にある。 地方自治体としての藤良村の面積は中心に位置する猿梨山(さるなしやま)及び周辺山林を含めると広大であるが、人口の約97%は猿梨山南側斜面の緩勾配地帯に拓かれた農村部に居住している。この地域は上藤良(かみふじよし)と称され、止口(とめぐち)、八丁(はっちょう)、陰(かげ)といった字(あざ)に分かれている。

上述の猿梨山は公称であるが、藤良村ではこの名称は全く使われず、一般的には申奈山(しんないさん)、もしくは敬称付きの「申奈さん」「申奈様」と称されている。本地域にはサルナシ果樹の自生が認められているものの、本地域におけるサルナシの呼称が「カラスグワ」であることから直接の語源ではないと思われる。過去の文献で「申奈」表記が見られることからも、「申奈」のほうが古い名称と思われ、申=十干十二支における「さる」、奈=「からなし」から後付けで猿梨と名付けられたものと推察される。「申奈」の語源については不明。

藤良村では猿梨山=申奈山を信仰の対象としており、神藤良上層には「申奈神社」と呼ばれる祭殿が存在する。 祭神は「申奈明神(しんないみょうじん)」または「申奈権現(しんないごんげん)」等と呼ばれている。
申奈明神は一種の秘神とされている様子であり、通常は社殿が開放されていない上、住人はおしなべて外来者に対し閉鎖的あるいは攻撃的であり、聞き取り調査により詳細を知ることはできなかった。但し、申奈明神信仰の中核には「おおかみ」「へび」「さる」「からす」「くも」といったモチーフが存在し、これらが「みつかい」「おまもり」と称されていることから、日本各地に見られる神仏習合の山岳信仰・神使信仰を基盤とする独自の信仰体系・祭祀が存在すると思われる。春と秋に二度開催される「申奈祭」または「山祭り」と呼ばれる行事では、「おおかみ行列」をはじめとする独特な神事が執り行われるというが、時期が合わず未調査である。

なお藤良村人口の残り約3%について、山間の一軒家に居住する世帯がごく一部ある他、特筆すべき事項として、猿梨山の北側(即ち山頂を挟んで上藤良の逆側)に存在する休水(やすみず)と呼ばれる集落を挙げる。
この集落について、上藤良では言及することもはばかられるような雰囲気があり、現地での調査は信仰に関するそれに比しても一層困難であったが、実のところ、この集落は極めて居住環境の劣悪な場所であり、その住人の殆どが何らかの不当な理由により強制的に移住・居住を余儀なくされた者であることが、村外における情報源の供述から推察されている。
(以下、完全に村外からの情報源に依拠した情報であるため信憑性は不明である)

休水はさらに住人が「皿永(さらなが)の早瀬」と呼ぶ河川(公式には準用河川「皿奈川」)と接してるが、境界は数十メートルの切り立った崖となっており、かつては転落事故による死者が絶えなかったという。水道は井戸水と浄化槽に依存しているなど、上藤良とはインフラは分離されている。電力は上藤良方面から鉄塔を経由して引かれており、農業用水も上藤良方面から引いているが、これらが「何らかの事情で」止まった場合、生活が困窮することとなる。このような事情もあり、集落は極めて貧しく、文化的生活の水準は低い。
休水は藤良村の信仰上特別な地域と見られている。前述の「山祭り」では、普段決して休水を訪れることのない長者家の者たちが「おおかみ行列」として休水を訪れ、様々な神事が行われる。その他にも「獣肉の発酵食品」や「農作業などの折に顔に被るべき独特な面布」など、上藤良にも存在しない独特な習俗が存在するが、これらも宗教的な意味合いを持つと考えられる。
なお、上述の「皿永の早瀬」は休水住人からは不吉な場所として扱われており、この川を経由して現れた者は「けがれている」として忌み嫌われるのだという。